中国において、中国政府による映画の”検閲”は義務付けられています。
映画だけではなく、小説やテレビなど、どんなものでも一度検閲されなければいけません。
中国のマーケットは世界で2番目に大きい規模なので、もし映画が中国の検閲を通過できないと、それは映画会社が数百万ドルの利益を失うことを意味します。そして中国人にとっては、世界で絶賛される最高の映画を観る機会を失うことになります…。
そんな中国の”検閲”によって、誰もが一度は見たことあるような超名作が、実は中国で公開されていないことをご存知でしたか?「え⁉あの映画が⁉」とビックリするような作品もたくさん。本記事では、そんな中国で上映されなかった映画をご紹介します。
上映禁止になってしまう”中国の検閲”とは?
「政府の意向に反している」と検閲で判断されれば、上映禁止
上映が禁止される要素はたくさんありますが、大前提として中国政府を否定的に表現する映画は論外です。
他にも、タイムトラベルを描いた映画、実写とアニメーションを組み合わせたもの、同性愛、過激な暴力、ヌードなどは決して中国の映画館では上映されません。
中国政府が発行しているガイドラインがあるらしく、そのガイドラインに違反していると中国での上映ができないようです。
また、これは中国に限ったことではありません。
宗教上の理由でマレーシアなどのイスラム教徒が多い国でもこういった検閲があります。
とくに”同性愛”についてはとても厳しく、直接的な表現がなくても上映禁止になることがあります。
中国で上映禁止された映画11選を紹介
中国での検閲に引っ掛かり、上映ができなかった映画をピックアップしてご紹介します!
『ベン・ハー』(1959年)
ウィリアム・ワイラー監督が、ローマ帝国支配下のエルサレムに生まれたユダヤ人貴族の息子ベン・ハーが自由の為に闘う姿を描いた作品。59年度のアカデミー賞では作品賞、監督賞を含む史上最多の11部門を受賞しました。
中国では当時、毛沢東政権下。本作で描かれる”自由と報復”は「好ましくない迷信」として拒否されました。
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年)
不朽の名作であり、現在でも世界中から愛され続ける映画『スターウォーズ』ですが、そんなシリーズの第1作目が中国の映画館では上映禁止になっていました…。
現在では『スターウォーズ』は中国でも大人気ですが、実はちょうど当時は、中国建国の父である毛沢東が亡くなって数か月後。西洋の文化や価値観を遮断していた毛沢東は、政府が製作する映画のみを上映する施策をしていました。そのため、当時の中国人にとって『スターウォーズ』はまさに”はるか遠くの銀河のお話”だったのです…(笑)
現在は、普通に上映されており、中国でも『スターウォーズ』ファンは沢山いるそうです!シリーズ1作目はインターネットなどで観たのでしょうか…?(笑)
そのあたりの詳細は不明です。。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)
誰もが知るハリウッドの超名作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が、まさかの中国では上映禁止!これはかなりビックリ…!
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の何がいけないの?と不思議に思いますが、どうやら「タイムトラベル」が原因のようです。中国政府では、「タイムトラベル」は危険な妄想であり、過去を変えようとするマーティ達の行動は歴史への敬意に欠けているとのことです。
そのため、世界的名作の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は中国では上映できませんでした。
『ブロークバック・マウンテン』(2005年)
2005年アカデミー賞を受賞した名作『ブロークバック・マウンテン』
ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール、ミシェル・ウィリアムズ、そしてアン・ハサウェイという超豪華なキャストも大集合し、1960年代のアメリカを舞台に、2人のカウボーイの密かな恋愛を描いた映画で日本でもかなり評価されている作品ですよね。
こちらは同性愛を描いているという理由で中国では上映ができませんでした。
『アバター』(2009年)
意外だったのが映画『アバター』です!
巨匠ジェームズ・キャメロン監督の代表作ですが、何がダメで上映禁止になったのでしょうか…?実は他の作品と違い『アバター』は最初の2週間は上映されていましたが、途中で打ち切りになりました。
それは、あまりにも人気すぎて興行収入が入ってしまい、経済的に成功してしまったからです。中国政府はアメリカの映画が、競合となる中国映画の興行収入に経済的な損害を与えることを懸念して、公開して2週間で禁止にしました(一方で3D版は他作品とバッティングしていなかったので上映されたとか)
また、本作の物語は先住民族のナヴィ族が自由を求めて反乱を起こす話なので、そこから中国人が触発されることを懸念していたことも理由の1つに挙げられます。
『怪盗グルーのミニオン危機一発』(2013年)
あの大人気キャラクター・ミニオンが活躍する映画のシリーズ2作目にあたる『怪盗グルーのミニオン危機一発』も中国では上映禁止に。しかもその原因は未だに不明です。
ハリウッドレポーターによると、中国産アニメを守るためなのではないかと述べられています。また、シナニュースによるとミニオンのスタイルは中国の子供に合ってないからなのでは?とも予想していますが、明確な原因は不明のままです。
『デッドプール』(2016年)
言わずと知れたクソ無責任ヒーロー『デッドプール』は、続編も公開されて日本でも大人気にのアメコミ映画ですよね。ご存知の通り『デッドプール』は口汚く、下品で、最悪で最高なヒーローです(笑)
放送禁止用語連発のキャラクターなので中国では上映禁止になりました。
映画会社20世紀フォックスは、中国での上映を試みようとNGシーンをカットして再編集を試みようとしますが、ほぼNGシーンだらけの本作は難しかったようです(笑)
そもそも『デッドプール』から暴力・エロ・下品をとったら魅力がなくなってしまいますし、その下品なキャラクターだからこそ世界から愛されているのも事実。残念ですね。。
『ゴーストバスターズ』(2016年)
こちらもビックリ!あの映画『ゴーストバスターズ』も中国では上映禁止となりました。どうやら、映画に登場するゴーストといった超自然的な存在は「カルト又は迷信をほのめかす」行為にあたりガイドライン違反となってしまうようです。
ちなみに、1984年のオリジナル版やその続編も、中国では上映禁止になってします。
『君の名前で僕を呼んで』(2017年)
個人的に残念だったのが、ティモシー・シャラメとアーミー・ハマーが主演を務めた青春映画『君の名前で僕を呼んで』です。
本作は、北イタリアの避暑地を舞台に、男性同士のひと夏のエピソードを描いたラブストーリーで、本当に素晴らしい映画…!
2017年に日本でもヒットし、名作の仲間入りをした映画ですよね。中国では、やはり同性愛を扱っているという理由で上映禁止になってしまいました…。
『プーと大人になった僕』(2018年)
次にご紹介するのは、映画『プーと大人になった僕』です。
老若男女から愛されるディズニーが手がける心あたたまる人間ドラマで、主演はユアン・マクレガーが務めています。同性愛でも、タイムトラベルでも、政治批判でもない本作が、一体何故上映禁止になってしまったのでしょうか…?
原因は、「プーさん」だからです。
現在、中国政治のトップである習近平国家主席は、太っていて目が細く垂れている顔立ちをしており「プーさんに似ている」とインターネットの中で言われています。中には比較画像や合成画像を作る人も(笑)
そのため、中国では「プーさん」とインターネットで検索しても結果が出ないように規制までされているのです。そのため、プーさんが出てくる映画なんてもってのほか!中国では上映はできません。
なんともビックリな理由ですし、日本だとあり得ない(あり得てほしくない)事ですよね…
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)
最後にご紹介するのが、タランティーノ監督最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)です。2020年アカデミー賞にもノミネートされている本作ですが、なんと公開の1週間前に中国政府から「NG」が出たようです。
想定される理由は2つあり、1つ目は暴力的・下品な描写。
これは本作のネタバレになってしまうので詳しく説明できないですが、劇中の中で過去を変えてしまうシーンがあります。さらに「FXXK!」をはじめとする汚い言葉も何度も登場します(笑)
2つ目は、劇中シーンでブルース・リーがブラッド・ピットに素手で負けてしまうシーンがあります。本作でのブルース・リーが少し傲慢に描かれており、実際にブルース・リーの娘が”屈辱だ”と批判し、中国政府に訴えていたとの噂もあります。
中国の配給会社はタランティーノに問題になったシーンのカットを要請をしているそうですが、まだ中国公開は未定のようです。
まとめ
今回は、
- 上映禁止になってしまう”中国の検閲”とは?
- 中国で上映禁止された映画11選を紹介
についてご紹介しました。
過激な暴力的や性的だからという理由はなんとなく分かりますが、プーさんの理由にはビックリですよね。
だた、世界第2位の大きさをもつ中国の映画市場は、ハリウッドや日本の映画会社がもはや無視できない存在なのも事実。そのため、近年は中国系俳優の起用はもちろん、中国上映を大前提にして映画の製作をされています。
ちなみに、中国人の友達いわく映画館で上映禁止になった作品も、インターネット動画サイトで簡単に見ることができるようなので困ってはいないようです(笑)
時代の流れや国の事情によってどんどん変化していく映画事情。今後も注目ですね!
記事参照:Ranker / South China Mornin Post / SPLINTER
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