日本公開から18年という時を経て、中国本土で2019年6月21日(金)に初上映された映画『千と千尋の神隠し』。公開から3週間で興行収入4.7億元(約74億円)を突破し、中国で大ヒットしました。そんな中、一部インターネットで「中国版の映画ポスターが美しすぎる!」と話題になっています!実はこれは”黄海”という中国人デザイナーが手がけた中国オリジナルのデザイン。本記事では、そんな映画ポスターを手がけた”天才デザイナー・黄海”についてご紹介します。
中国の天才デザイナー・黄海のプロフィール
まず、はじめに”中国の天才デザイナー”と称される黄海(Huang Hai / ホアン・ハイ)のプロフィールについてご紹介します。
経歴
黄海(Huang Hai / ホアン・ハイ)
1976年 福建省生まれ。
厦門(アモイ)大学でデザインを学んで1999 年に卒業。
卒業後は、地元のテレビ局で報道記者として働いた後、2002 年に北京に移り住み、広告会社でデザイナーとして働き始める。その後、映画ポスターデザイン会社“竹也文化社”設立。
テレビ局での仕事はアーティストとしてではなく、ジャーナリストとして働いていたが、そこでの経験が、社会問題に対して意識するようになり、その後の作品に大きな影響を与える。
2007年に、姜文監督の映画『太陽照常昇起(THE SUN ALSO RISES)』のポスターを手がけ、カンヌ映画祭で受賞するほど注目を浴びる。
スタイル
黄海は人間ドラマ、子供向けアニメーション、コメディ、アクションなど様々なジャンルの映画ポスターを手掛けているが、どの作品でも独特な黄海スタイルがあります。
黄海の作品では、伝統的な中国を連想させる水墨が使用されていたり、単色でシンプルなもの、そして煌びやかなゴールドが多く使用されています。シンプルだけど、創造的でパワフル、それが黄海のデザインスタイルです。
世界での評価
英国の映画雑誌「リトル・ホワイト・ライズ」が選んだ「2018年の映画ポスターベスト20」にて、黄海が手掛けた映画のポスターが見事選出。しかもどちらも日本映画です!
宮崎駿監督の『となりのトトロ』の中国版ポスターが第10位、そして是枝裕和監督の 『万引き家族』の中国版ポスターが第1位に選ばれました。黄海の実力派、もはや世界的にもトップレベルと言えるでしょう。
黄海が手がける映画ポスター(中国・ハリウッド)
黄海は、中国映画のポスターデザインはもちろん、ハリウッドの映画ポスターデザインも手掛けています。正直、個人的にそこまで好きではない映画も、黄海が手掛けると素晴らしい傑作のように見えてしまいます(笑)
日本のポスターと比較して、いくつかご紹介します。
『グリーン・ブック』(2019)
アカデミー賞作品賞を含む3部門を受賞した映画『グリーンブック』
人種差別が色濃く残る60年代のアメリカ南部を舞台にしたヒューマンドラマです。
日本でも全国公開されたため、映画ポスターを見たことがある!という方も多いのではないでしょうか。そしてビックリなのが黄海が手掛ける中国版ポスター!淡い雰囲気に統一されており、よく見ると白人と黒人が片手ずつハンドルを握っています。
同じ映画なのに、全然違う映画のよう…!
『イップ・マン 継承』(2017)
香港発の大人気シリーズ「イップ・マン」も黄海が手がけると、シンプル且つスタイリッシュに!
シリーズ3作目となる映画『イップ・マン 継承』では、これまでより”夫婦愛”に焦点をあてた内容ということもあり、意味ありな2人の影のみをデザインされています。もはや映画のポスターというより、1つのアート作品のよう…。
『バイオハザード ザ・ファイナル』(2016)
ゾンビ映画の金字塔「バイオハザード」シリーズの最終章、映画『バイオハザード ザ・ファイナル』は日本でも大ヒットしたハリウッド作品の1つですよね。
そんなハリウッドから依頼を受けて制作したポスターがこちらです。中央にバイクにのった主人公がいて、その主人公に向かってゾンビが囲いながら走っているという図です。日本版と違いキャッチコピーなどの文字情報はほぼありませんが、デザインだけで”絶体絶命”なファイナルということが伝わりますね。
とてもインパクトのある映画ポスターです。
『グランド・マスター』(2013)
『ブエノスアイレス』『花様年華』の王家衛(ウォン・カーウァイ)監督がはじめてカンフー映画に挑んだ映画『グランドマスター』のポスターも黄海が手がけました。
主演トニー・レオン、チャン・チェン、そしてチャン・ツィイーという超豪華キャストが集結したにもかかわらず、黄海はあえて主演2人が並ぶ影の姿のみを描き、シンプルながらも台頭する2人の力強さを感じさせます。
黄海が手がける映画ポスター(日本)
様々な映画のポスターをデザインしてきた天才・黄海ですが、遂に日本映画も手がけるように…!
そもそも日本映画が中国で公開される作品数は多くありませんが、映画『STAND BY ME ドラえもん』の公開をきっかけに、少しずつ中国でも日本映画が公開されています。
ここから、黄海が手がけた日本映画の中国版ポスターをご紹介いたします。
『STAND BY ME ドラえもん』(2014)
中国におけるアニメ映画の日計興収の最高記録を叩き出した映画『STAND BY ME ドラえもん』のポスターも、黄海が手がけたもの。伝統的な中国衣装を着たドラえもんが、水墨画で描かれています。昔ながらな雰囲気と、ポップなキャラクターのギャップがとても素敵です。
また、右下にあるどら焼きがとても可愛いですね(笑)
『万引き家族』(2018)
2018年カンヌ国際映画祭にて最高賞のパルムドールを受賞した映画『万引き家族』
黄海が手がける中国版ポスターでは、全てイラスト。
和風テイストで、そしてどこか哀愁漂う仕上がりになっており、英国の映画雑誌「リトル・ホワイト・ライズ」が選んだ「2018年の映画ポスターベスト 20」にて第1位を見事に受賞しました。
『となりのトトロ』(1998)
アニメ界の巨匠・宮崎駿の代表作『となりのトトロ』デジタルリマスター版が2018年12月に中国にて公開し、黄海がポスターのデザインを担当しました。日本では1988年に公開された名作ですが、実はそこから30年間、中国では一度も公開されたことはありませんでした。
そんな待望の公開に向けてこちらのポスターが解禁されると、ネット上では大きな話題に。
日本でも、「趣があって感動した!」「メイとサツキを俯瞰して描いた構図がとても良い」などと絶賛の声が上がっています。
ちなみに、草原の中を走る2人の女の子が描かれていますが、よく見ると草原ではなくトトロのお腹の上を走っているということが分かります(笑)黄海の遊び心とトトロ愛を感じる素敵なポスターです!
『千と千尋の神隠し』(2001)
日本歴代興行収入第1位、第75回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した日本アニメの大傑作が、18年越しに中国で公開されました。『となりのトトロ』に続いて、デザインを担当したのが黄海です。制作したのは全4パターン。
登場キャラクターが障子に描かれたポスターは、障子の中の”向こうの世界”と障子の外の”こちらの世界”でうずくまる千尋が描かれています。また、千尋が海の中の線路を走っていくポスターには、線路に沿って白龍と顔無しが描かれています。
また、色違いのこちらのポスターはインパクト大!
千尋とハクのあの名シーンを力強いタッチで描いたポスターです。個人的にはこのポスターが一番好きです。
映画祭のデザインまで、マルチに活躍する黄海
黄海は、台湾版アカデミー賞と称される「Taipei GoldenHorse Film Festival(台北金馬影展)」のビジュアルデザインも毎年手がけています。
優れた映画カルチャーを選出する場に相応しい、洗練されたビジュアルが毎年発表され、台湾はもちろん、中国や韓国のファンも彼のデザインを毎年楽しみにしています。
まとめ
以上、
- 中国の天才デザイナー・黄海のプロフィール
- 黄海が手がけた中国・ハリウッド映画のポスター
- 黄海が手がけた日本映画のポスター
- 日本での反応
をご紹介いたしました!
日本にもコピーライターの糸井重里さんなど有名なコピーライターはいますが、黄海さんのようなカリスマ的な映画ポスターデザイナーは現在だとなかなかいないですよね。
今後も、黄海さんのデザインに今後も注目です!
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